政策21について

政策21の考え方(インタビュー)

東北経済産業局から政策21の設立経過や支援内容などについてインタビューを受けました。

今回インタビューしていただいた方は、政策評価担当の方でもあり、政策評価のかなり突っ込んだ部分にも話に及び、たじたじとなりながらも楽しい時間を過ごしました

インタビューの対応は、副理事長の鎌田でした。

設立の経緯

(インタビュアー:以下「イ」と表記)政策21の設立の経緯を教えてください。

(鎌田:以下「鎌」と表記)「行政機関が行う施策の評価に関する法律」が施行される1年前(2001年)に設立しました。岩手県立大学総合政策学部の修士課程の一期生が中心になって、勉強するだけではなく、実践の場を作ろうということで集まったのです。当初の構成員は大学の先生も含めて、設立に必要な10人ぎりぎりだったと記憶しています。

(イ)当時、“政策評価”を活動内容にするという発想は斬新だったのではないですか?

(鎌)当時、三重県の「評価みえ」が評価を行っていましたが、政策評価専門のNPO法人としては第一号だと思います。国や自治体職員などの実務者だけでなく、一般市民も政策評価や政策そのものへの関心を高め、さらには政策提言できるよう支援していけたらと思っています。

政策評価への支援

(イ)具体的には、政策評価の支援にはどのように関わっていくのでしょうか。  

(鎌)支援にはある程度の期間が必要であると考えています。まず、1年目は評価基準を作ること。2年目3年目は具体的に評価してみて、評価システムを検証していく。政策評価を作り上げるサイクルとしては3年かかると思います。

評価基準を作るということは、大きな意味で行政組織の意志決定の基準をつくことにほかならないので、行政とNPOとが共同してマネジメントシステムの改革を進めるということになります。

(イ)単に基準を作るだけではなく、マネジメントシステムまでかかわるとなると、不通のイメージの「協働」よりもっと深く入り込んでいる印象がありますね。

(鎌)そう思います。深く関わる場合は政策提言までしますし、そこまでいかなくても事務事業の改善提案を行います。

(イ)専従スタッフはおられず、皆さん他にお仕事をお持ちですね。大変ではないですか?

(鎌)正直、2足、3足のワラジは大変です。でも、現場に足を運ぶことは、NPO法人「政策21」としてもノウハウ蓄積になりますし、スタッフ自身の研究活動の参考にもなります。私達が支援事業を受けるか受けないかの基準は「法人としてノウハウを蓄積できるか、会員の研究に役立つか、先方に政策評価に対する熱意があるか〉。この何れかがあればお引き受けすることとしています。

(イ)組織ミッションに合うと思ったら、引き受ければいいという、事業を厳選して引き受けることができる体制ですね。

(鎌)そうですね。専従スタッフがおりませんが、そのような視点で見ると逆にそれが強みになっていると思います。

外部から評価支援を受けるメリット

(イ)一般に、政策評価システムを構築する場合、内部のみで進める傾向が強いと思いますが、評価に外部から支援するメリットはどのようなものでしょうか?

(鎌)評価システムは、関連書籍を調べたり、先進地視察に行ったりすれば、とりあえず導入できるんですよ。しかしながら、どうしても表面的になりがちです。何故そのような評価調書を作成したか、どのような情報を収集するかなど、本質の部分が分からないままになってしまう。本当に必要なのは、「何故評価をするか」「評価を何に活かしていくのか」を常に意識することです。とはいえ、最初は専門的な知識や考え方が身に付いていませんから、私達のように専門的に研究している組織を活用してもらえたらと思っています。私達はフォローアップを含めて、3年程度の長期的なお付き合いをさせていただくことにしていますし、できるだけ評価担当課以外の方とも意見交換しながら進めていきます。

(イ)政策評価とは、短絡的発想ではいけないのですね。

(鎌)職場内に本当に定着するには、早くても5年はかかると思いますよ。

政策評価を成功させるポイント

(イ)政策評価をうまく運用するポイントはありますか?

(鎌)まず、自分達の政策や施策にあった指標を持つことが大事です。他の行政組織が作った指標を並べて「どれがいいかな」なんて考えてはダメなんです。ロジック思考に基づいて指標を作成する必要があります。「風が吹けば桶屋がもうかる」という話に例えれば、風から桶屋までの道筋を明らかにすること、つまり、どの地点でどういった変化が起こしていくかを予測していくということが大切なのです。いろいろな事象を体系化し、どういう筋道で事業展開していくかを考えて、ノウハウを蓄積して定型化していけば、かなりいい指標が設定できるようになると思います。

(イ)実際は、できていないことがほとんどですよね。自分達なりの基準が見えてくるまで多角的に考えて検討しなければならないということでしょうか。

(鎌)そうですね。本当に大切なのは、自分達で考え、脳味噌に汗をかくこと、それも少しの汗ではありません。そして政策決定をする際には、推測ではなく事実に基づくことです。そして、考えた結果を蓄積し、共有していくことが本当に大事であると感じています。

(イ)やはりノウハウの蓄積が必要ですね。自分の経験からも、既存の指標を使っても、自身の活動が見えてこないことは多いです。

(鎌)政策評価を実効性のあるものとするためには、頭で分かっているだけではダメで、他を真似すればできるものではありません。「習熟」、つまり経験の積み重ねが必要だと思います。

行政とのパートナーシップ

(イ)行政とのパートナーシップに一番大切なことは?

(鎌)まず行政の方々にお願いしたいのが、NPOをコストダウンの手段として見てほしくないということです。私達を安価なコンサルタントと捉えてしまうと、行政側の当事者意識が薄くなり、協働のメリットがなくなります。政策評価に大切なのは、評価システムの構築段階から私どもと積極的な意見交換を行い、組織の中に評価スキルの浸透と習熟を図ることです。試行錯誤や事例研究のプロセスが一番大切なんです。

(イ)「政策21」では、専門知識を提供するだけでなく、一緒に考えることで、そのノウハウを委託先に移転していくということも想定されているんですね。

(鎌)そうです。さらに、行政の方々が自らノウハウを作り出せるような意識や考え方が伝えられたらいいですね。これまでいくつか評価システムの支援をさせていただいていますが、一緒にやっていくという意識を持っていただければ、行政側の皆さんにも必ず伝わっていくと実感しています。

(イ)確かに政策評価の方法論は多岐に亘るので悩みますが、結局、外部のノウハウを取り入れながら、自分達にあった方法論を考え続けなければならないんですね。

(鎌)そう思います。また、行政の担当者は異動が多いことがかなり大きなネックになっています。評価担当者同士、あるいは評価担当者と研究者など、人的なネットワークはすぐにはできないと思うんです。私達は、評価専門で継続して事業をしていますから、評価関係者の情報が構築されています。どこの誰がどんな人か、何が専門なのか、承知していますから、そういった点からもサポートができると思うんです。

(イ)地元だけではなく、全国的な人的ネットワークがプールできているということですね。

(鎌)私達のこのようなノウハウを大いに活用していただきたいですね。

(イ)行政とのパートナーシップに必要なものは何だと思われますか?

(鎌)受託関係を越えた信頼関係を構築することだと思います。お互いの立場を越えて、同じ目的を達成するための「同志」になれるかどうかが評価システムの導入や運用の成否に直接関わってくる。

(イ)さまざまな行政との協働を通じて、行政へのご意見はありますか?

(鎌)予算査定の関係が大きく影響しているのかもしれませんが、ほとんどの事業が「事業実施すればオッケー」のように単発的で、評価を基にした意思決定がおこなわれていないことが残念です。

(イ)「その事業を実施した」という事実ではなく、その事業が地域に何を残したのか、残せるのかを、私達行政側は考えていかなければならないということですね。今日はありがとうございました。

 HP移転前の記事です(2007年4月20日)